陸上男子４００ｍリレー銅メダル獲得の舞台裏 ― 加速そがぬバトンパス

　


　リレーのバトンパスにはアンダーハンドとオーバーハンドがある。日本の代表チームは０１年から「アンダー」を採用。渡し手の腕が上から下の動きのため、手元が狂うとバトン落下につながる「オーバー」と違い、下から上の動きで受け渡しにミスの少ない方法だ。また、日本選手の前傾する走法だと「オーバー」の受け手の腕を高く上げる動作は加速の障害になる。

　「アンダー」は一般的に渡し手と受け手の距離が短く、タイムを稼げないのが短所とされる。しかし、日本陸連の科学委員会の調査によると、昨年の世界選手権でバトンの受け渡しをしなければならないゾーン（２０メートル）の日本の所要タイムはパス３回分で５秒６６。優勝した米国より０秒１３、２位のジャマイカより０秒３３速かった。

　北京五輪に向けて、日本陸連の土江寛裕・男子短距離副部長がはじき出した計算は、受け渡しゾーンの前後１０メートルを加えた４０メートルをそれぞれ３秒７５で通過できれば、ゴールタイムは日本記録（３８秒０３）を破る３７秒８５となるというもの。１走を務める塚原直貴（富士通）によると、今春の合宿ではすでに３秒８０ほどでこの４０メートルを走っていた、という。

　チームのまとまりも大事。アンカーの朝原宣治（大阪ガス）は「信頼して思いっきりスタートを切ったり、相手の顔色をみて調整したりするのが大事」。彼のようなベテランがいたのも大きな武器だった。